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Viewsic「セルフライナーノーツ」より

ゲスト=エレファントカシマシ 宮本浩次
(2000年4月30日放送)

※以下の文は番組のインタビューを、かなりいい加減に要約したものです。参考程度にご覧下さい。


 宮本自身による「good morning」全曲解説


 ガストロンジャー

打ち込みのデモテープをどうやってレコーディングしていいか、まったく方法を持っていなかった。根岸さんにお願いしたら「簡単だよ。サンプリングしてやってもらえばいいんだよ」。そこで初めてコンピューターが登場したが、サンプリングってすごいなって思った。

「なーんだ、知ってる人に聞けばあっさり解決することでした」

丁々発止、真剣勝負でコンピューターと初めて格闘した曲。スタジオでの喜びたるや言葉に言い尽くせない。緊張感の高い、いいレコーディングだった。ハッピーなレコーディングスタイルだったと思う。ガストロンジャーだけで1ヶ月かかった。

何しろサウンドありき。歌詞は、自分の中では平凡な自然体なものになってるが、サウンド、メロディ、歌い方によって、非常に破壊力をもってくる。これがロックの原初の姿。「できうる限り」と言わざるをえない結論、苦しさ、もやもや、など非常にリアルな歌詞。リアルなものが、音楽を通すことで破壊力を持って僕らを覚醒させ、また肯定してくれる。これがロックだと思った。


 眠れない夜

元々長い曲だったものを編集して、途中にきれいなメロディになる部分が入っている。それが最終的にサウンドの説得力を増している。実験でもあり意欲作。好きな曲。リズムを自分に一番近い形にしないとメロディも歌詞ものってこない。それを初めて確信できた。

「サウンド」「存在」「サウンドを作る能力」と言う部分で、僕はロックを体現している。僕は一人で緊張してる。これから戦っていかなければいけない。『眠れない夜』方式の延長は、これからたくさん出てくるだろう。


 ゴッドファーザー

キャッチーな部分のリズムから始まり、王道のリフが続く。一番最後にできた曲。面白かった。ミックスダウンに相当時間をかけた。まずリズムありき。サウンド、メロディ、そして最後に歌詞。歌詞は支離滅裂な部分も含めて、サウンド、メロディに忠実にフィーリングで作った。自由になれた。

「サウンドってものは大事だなぁ。みなさん」


 good morning

できた時は嬉しかった。車でピョーッと走ってる感じ。歌詞でサウンドを邪魔したくない、ストーリー性よりもテンションの高さが表現されたらいいと思った。全体のアルバムのトーンを代表してるので、アルバムタイトルにした。『第2ガストロンジャー』っていうのがこの形なんじゃないかなと思う。

「見て下さい。サウンドと合致したらこんなに素晴らしい説得力をうむじゃないか」


 武蔵野

今までにセンチメンタルなラブソングも作ったけど、そうじゃないドライな捕らえ方。ドライに、情緒的じゃなく淡々と東京を歌っている。情緒が非常に洗練されて、ドライになってることを感じ取ってもらえるだろう。日常的で、決して興奮していないし憤ってもいない。淡々と情緒のある曲をうたっている。ひとつの完成の姿がある。アルバム前半のクライマックス。


 精神暗黒街

high と blue という部分のもやもやは、全員が引きずっている。それがロックの表現としてまとまった時、非常にリアルで、それを肯定してくれる。歌詞の一個一個は、あまり考えてない。ただしバランスが取れているから、いろんなイメージと意味を持ってくる。リアルだからといって生々しくうねうねしてるのではなく、音楽の助けを借りて、メロディ、歌詞がバランスされた時、初めてひとつの世界を見せられる。


 情熱の揺れるまなざし

いなたいサウンドになりがちなのを、正確なリズムの助けを借りて防いでいる。暑苦しくしたくなかった。サウンドができると、メロディがのびのびし、歌詞がのびのびしてくる。サウンドが明快であればあるほど、ボーカルスタイルが自由になる。肩の力をぬいて、自由に日常的にレコーディングができた。リアルなものが爆発力を持つ。ロックっぽい。

「やっぱり自分のやりたいことやんのが一番いいわ」


 I am happy

日常的に「人に遊んでもらう」「遊ぼうぜ」って言葉をよく使う。曲が非常にハッピー。もう、なんとも言えない。日常的に引きずってるものがあっても、音楽の中では自由にできる。ただ極論をいうと、そんなこともあんまり考えてない。


 生存者は今日も笑う

これはすごく楽しかった。ピャーっと作った。自分のなかでは「最高傑作ができた」くらいに楽しかった。この曲は、B'zの歌い方にチャレンジしてる。実際レコーディングでも「B'zの歌い方に慣れてないんでね」とか言ってたし。でも、誰も笑ってなかった。冗談のつもりでいったのに。もしかしたら何言ってるかわかんなかったのかも知れない。


 so many people

この曲は1年以上レコーディングして、歌詞にも半年以上かけている。「島国」「革命」「瞬間の積み重ね」といったことを “so many people” に訴えたかった。島国の風土に絶望感を持ってる。新しいもの、次のルールに移りたい。そのためには人間を相手にするのではなく、ルール(風土)を相手に戦っていかなければならない。これまで、ルールと戦って打ち破るだけの武器を持っていなかった。「風土に根差してるものだったら、もがいても一緒じゃないか」が前提。最終的にそういうところを訴えていきたい。


 Ladies and Gentlemen

広告文に「全12曲」と書いてしまって、1曲足さないといけなくて、これしかなかった。でもここに入っているのは、とってもなんかいいよね。


 コール アンド レスポンス

1日13時間歌ったのは初めて。今までだったら大体1回か2回しか歌わない。昼の1時から夜2時まで歌って、翌日も歌った。自分の中で大切な曲だったんだろう。まだ歌詞がついてない時から、サビがすごく好きだった。サウンド、メロディ、歌詞が一体になってたら、「ご承知のこととは思いますが〜」という文も、充分説得力を持ってくる。これで紅白歌合戦に出たいよなぁ。

タイトルはいい加減につけたけど、この曲は『ガストロンジャー』に対する “コールアンドレスポンス” だったと思う。


エレファントカシマシ入門サイト good morning (http://elebox.moo21.com)