DJ=渋谷陽一/ゲスト=エレファントカシマシ
(1988年4月24日放送)
――今日はエレファントカシマシという、まあ皆さんほとんどご存知ないと思いますけれども、全くの新人バンドの4人に来てもらいました。僕は個人的に非常に気に入っているバンドなんですけれども、まずは1人づつ自分の名前と担当楽器を言って、リスナーの人に認知させて下さい。じゃお願いします。
宮本「はい。えーボーカルの宮本です」
冨永「ドラムの富永義之です」
高緑「ベースの高緑です」
石森「ギターの石森です」
――という4人のバンドなんですけれども、レコードデビューは3月という事なんだけど、バンドそのものはいつぐらいからやってたんです?
宮本?「高1ぐらいから」
――高1ぐらい。今いくつでしたっけ?
宮本?「にじゅう・・・いち」
――ほー。若いですけどもね。いいですけどもね。えー(笑)高1ぐらいから。最初はどんなバンドだったんです?
冨永?「コピーバンドです」
――コピー・・・(笑)なんのコピーバンドだったの?
冨永?「いろいろやりました。外国のとかいろいろ」
――宮本君の話をちらっと聞いたら、キルザキングをやっていたという非常に恥ずかしい話を聞いたんですけども
エレ「(笑)」
宮本「やってました。(メンバーに向かって)ばらしたな」
エレ「(笑)」
――結構ハードロックが好きだったわけ?当初は
宮本「そうですね」
――へえー。それが今のすごいストレートなロックンロール、骨太なロックンロールバンドになってるんだけども、こういう風になったきっかけみたいなのはどうなんですか?
冨永?「・・・きっかけ」
――だんだんなっていったの?
宮本「そうですね。RCとか流行って」
――ふーん。オリジナルもそれに合わせてだんだんやるようになってきた?
宮本「そうですね」
――最初はやってなかった?
宮本「最初は全然やってませんでした」
――ふーん。一番最初にオリジナルをやったのはいつぐらいなんですか?
宮本?「高1・・・の終わり頃か。はい」
――へえー。その時の曲ってのは今の曲と、レコーディングされた曲とおんなじような感じだったの?
宮本「あ、似てますね。考えてみたら」
冨永「似てるよね」
――ふーん。その頃から結構ライブハウスやなんかには出てたの?
宮本「出てました」
冨永「出てた」
――へえー。もう高1ぐらいからやってたの?
宮本「そうです」
――へえー。お客さんはその頃からついてました?
宮本「や、だからやっぱ友達とかに(笑)」
冨永「その頃のほうがいたんじゃないか(笑)」
エレ「(笑)」
――今そんなにねえ、ライブハウスでもエレファントカシマシが出るっていうと満員になるって感じじゃないけども、それでも不安になりません?『俺達ってのはひょっとすると、受けないんじゃないか』とかさ
冨永「ならない」
――自信がある
冨永「うん」
――冨永君はそう言ってますけど、高緑君はどうですか?
高緑「不安にはなりませんけど・・・」
――異色かな?とは思う
高緑「そうですね。周りから見たらそういう風には見えるのかもしんないし・・・」
――特に今割とアレンジ主体というか音がきらびやかなバンドが多いから、そういう中にあってはエレファントカシマシってのはすごく・・・何もないですよね
宮本「・・・ああー」
――お化粧要素が。ギタリストとしてはどうですか?もうちょっとなんかこう、いろいろオカズをいっぱい入れてみようとか思いません?
石森「いや。今はそう思ってません」
――もう今のスタイルでいい
石森「ええ」
――断固正しいぞ俺達は、みたいな
石森「いやぁー・・・そうですね」
――そういうバンドの方針をすごく感じさせるようにファーストアルバムは、まあ悪く言ってしまえば、デモテープがそのまんまレコードになってしまった、良く言えばすごくストレートで率直なロックンロールという感じなんですけども、あれはもう当初からああいうものにしようと思ってたんですか?宮本さん
宮本「いやそうでもないんですけど・・・人が」
――人が(笑)
宮本「一発録りの方がいいんじゃねーかっつーから」
エレ「(笑)」
宮本「そんなもんかね、って。だからまったくわからなかったですから、レコーディングってどういうもんとかそういうのが。1回でしかやっぱ録った事なかったし」
――なるほどね。で、できたものを聴いてみて、やっぱりこれが俺達だなって感じで納得できましたか?
宮本「そうですね。よかったと思います」
――すごく僕は聴いて感動したし、すごく質のいいレコードだなぁと。今どきの新人バンドとしては珍しいなぁという、そういう感じがしたんですけども、ただこの『エレファントカシマシ』ね。よく言われるだろうけれども、コミックバンド的なニュアンスで取られるグループ名ですけども
宮本?「そう・・・」
――ですねえ
冨永?「みんな言うよ」
――ねえ。変えようとか思いません?高緑さん
高緑「そうですね。入った時からその名前だったからよくわかんないんですけど」
――これ命名者は誰なんです?
冨永「誰だ?」
――宮本君?
宮本「いません。命名者」
――いません。へえー。主体性のないグループ名なんだ
宮本「そうですね。恥ずかしいですね、今となっては」
エレ「(笑)」
宮本「今となってはしょうがないけど。・・・あんま好きじゃないですね。もう・・・」
冨永「変えように変えられない(笑)」
宮本「そう。これんなっちゃってるからさー。言いなれちゃってますけど最初は結構人に言うと恥ずかしかったですよね」
エレ「(笑)」
――じゃあ変えればいいじゃん
エレ「(笑)」
宮本「何か考えてよ」
――『何か考えて』それは俺の仕事じゃない・・・
エレ「(笑)」
――石森君はどうなんですか。これエレファントカシマシってグループ名は
石森「ええ。気に入ってます」
――気に入ってますか(笑)
石森「ええ」
エレ「(笑)」
――だけどまあ、なってしまえばね。エレファントカシマシっていうバンドそのものがメジャーになってしまえば気にならないかもしれませんけどね、うん。・・・ん?何ですか?
冨永「今となったらかっこいいよ」
――かっこいい?
冨永「うん」
――って言い聞かせてんじゃない?自分に。そんな事ない?
エレ「(笑)」
冨永「かも知れない」
――これからすごくプロのバンドとしてのいろいろな活動が待っているわけですけども、自分たちとしての自信っていうのはどうです?商業的な意味での。もう1年経ちゃ武道館だぜ、みたいな。そういうことは全然考えません?
宮本「わからないもんね」
――ふーん。ただやってくしかない、みたいな
宮本「うん」
――宮本君の曲ってのは言葉がクリアーで、歌詞がダイレクトに耳に伝わってくる、そこが僕は一番気に入ったんですけども、その辺は自分でこれだけは伝えたいっていう風に曲を作ってるわけですか?
宮本「や、そういうのは特にないんですけど、やっぱほら、普通の人がやっぱきっと考えてることとね、それほどかけ離れたこと言ってないと思うんですよ。その辺じゃないですかねやっぱり。違いますかね?」
――ふーん、そうかもしれないし、それからあのー言葉に無理がないというかね、うん。変に脚色してどうこう、かっこいい事を言おうってんじゃなくて、すごく率直でありながら・・・率直なことを率直に歌おうと思ってもすごく歌えるものじゃないんだけども、その辺はやっぱり才能だと思いますけどもね、うん。非常にしっかりとした言葉、それがメロディとビートに乗ってるという感じで。僕なんかはやっぱりどうしても宮本君のボーカルというのがこのバンドの中心という感じがするんですけども、他のメンバーとしてはどうですか?やはりドラムだぞ、とか
エレ「(笑)」
――冨永君はどうですか
冨永「そう・・・ですね・・・俺は・・・好きなことやってるからいいなぁ」
――なるほどね、ということはあんまり特に考えない?
冨永「相手がどう取るかだもんねえ」
――そうだもんね。ドラマーとして自分の仕事をしっかりやっとけばいいという
冨永「ドラマーとして・・・(笑)うん・・・かっこいいでしょ?」
――うん。いい、いい、いい。いいと思いますよ。このバンドのリズム隊も、ギターもいいと思う、すごいシンプルで
エレ「(笑)」
――もうちょっと全体にね
冨永「飾って欲しい?」
――いやあ、技が出てくると。率直ながら何か技が感じられるみたいなそういうアレンジが出来るようになればいい。まだ21歳ですもんね。・・・だけどこういうタイプのロックンロールやってると何か『お前たち時代錯誤じゃない?』とか言われない?
エレ「(笑)」
宮本「前はいっぱいいたんだろうな、こういうの」
――ああ、だんだん少なくなっちゃった?
宮本「じゃないんですか?」
――どうなんだろうね。僕は21歳のバンドをひとしきり聴いてないからよくわかんないけど(笑)
宮本「時代は関係ないですよ、だけどはっきりいって」
――なるほど
宮本「と思います。そういうものはやっぱ。特に俺、人に影響されてやってると思ってないしさ、別に今」
――自信ある
宮本「うん」
――すごいですね。皆さんにもこの宮本君の非常にエキセントリックな意志の伝達が伝わってくると思いますけれども
エレ「(笑)」
――これがこのバンドの魅力になってます
宮本「ありがとうございます」
――ライブ活動ってのは結構やるの?これから
宮本「ポツリ、ポツリと」
――ねえ。何か無料コンサートをやったりとかいろいろ企画してるみたいだもんね。僕はライブ見た事ないんで絶対見ようと思ってますけども、人づてに聞くと、客を罵倒するだけのライブだと・・・(笑)
エレ「(笑)」
――そういうもんなんですか?宮本君
宮本「そう言えばそうかもしんないけど。言われてみれば」
冨永「いつの間にかっていうか」
――『宮本が勝手にやってる』?
エレ「(笑)」
――もうちょっと他のメンバーは平和的にやりたいと思ってますか?
エレ「(笑)」
冨永「思ってないなあ」
――いいんじゃないか、みたいな?
冨永「うん」
――えーという、こういうユニークなバンドの(笑)エレファントカシマシ
エレ「(笑)」
――じゃあセカンドアルバムでまた大きく成長して、またここでいろいろ話を聞かせて下さい
エレ「はい」
――どうもありがとう
エレ「どーも。ありがとうございましたー」
全員おとなしく、シャイなにーちゃんといった感じ。「(笑)」の部分は「シシシシ」「ククク」といった忍び笑い。